僕が「趣味起業」を勧めない理由


hobby business

このエッセイの中でもこれまで何度か「起業」について語ってきました。僕自身は、雇われる身でいるより起業することを選んだので、起業を勧める側だと思われることもあるのですが、一概にそうとも言えません。

最近「趣味起業」という言葉をよく目にするようになった気がします。趣味起業には、「趣味的に起業」「趣味を活かして起業」の2パターンがあると思います。

ひとつ目の「趣味的に起業する」というのは、お金や時間に余裕があって起業を趣味のように楽しんで行うということです。無理のない範囲で起業しようという考えは、それはそれで素晴らしいと思います。誰だってリスクを背負いたくないし、今、勤めている会社を無理に辞める必要もないと思います。

でも起業をするというのは、多くの人を巻き込むものです。本人にとっては趣味かも知れないが、巻き込まれる人にとって、それが本気であるか趣味であるかということは関係ありません。起業には社会的責任が伴います。

そして、ふたつ目の「趣味を活かして起業」ですが、これも以前からある発想で、うまくいけば素晴らしいと思います。しかし、いくら好きなことでも趣味を仕事にしてしまうととらえ方が変わってしまいます。仕事になった瞬間に「しなければいけないこと」になってしまうのです。趣味を活かして起業するパターンの人はここを覚悟しなければなりません。

残念ながら僕は毎日ワクワクが止まらずに仕事をしているとは言えませんし、毎朝、ワクワクしすぎて目が覚めるようなこともないです。単純に早起きなだけなので、朝早く起きているだけです。起業についてよく相談される側の僕もそんな程度です。人によっては幻滅するのかもしれませんが、現実はそんなものじゃないかなと思います。

もっとも誰かにやらされているような義務感は感じませんが、僕が今やっていることで社会をより良く変えられるはずという使命感は強く感じています。その使命感は自分を自発的に動かす大きなエネルギーにはなっています。

趣味を仕事にして楽しめていて、そして成功している人は一体どれくらいいるのでしょうか。最初は好きではじめたのに、仕事にして毎日関わることで見るのもいやになったという話もよく聞く話です。

さらに現実は厳しくて、好きだからといって必ずしも才能があるかというとそうではないですよね。「好きこそものの上手なれ」という言葉もありますが、実際はあまり好きでないこと、嫌いなものに才能や適性があることもよくあることです。

「好きなことを仕事にしよう!」、というか「嫌なことを仕事にしていつまで消耗しているの?」と言うような風潮がなんとなくありますが、逆に嫌いなことでも仕事にできるなら、それもいいのではないかと僕は思うのです。

志がある人がいつでも起業にチャレンジできる世の中であってほしいのですが、誰にでもできますとは言えないのが起業です。事業が大きくなればなるほど人を巻き込んでいきます。

「趣味起業」。とても魅力的な響きをもっていますが、社会的な責任を負っていくという自覚と覚悟がないならば、楽しみだけを目的に起業はしないほうがいいのではないかと僕は思っています。
  
【安藤俊介の主な著作】